ナレッジknowledge

2016/12/21

【連載】高速ユーザーテスト実践講座 第12回(最終回)「UX活動の始め方」

第12回(最終回)「UX活動の始め方」

 
ユーザーインタビュー、ペルソナ、ジャーニーマップ、etc…。UXブームの昨今、製品開発の現場でも様々なUX手法を見聞きするようになってきました。そのため、本連載の読者の皆さんも、こんな疑問をお持ちになっているかもしれません──「ユーザーテストだけでいいの?」
 

成熟度モデル

 
個人が技能を身に付けるときと同様に、新たな活動が組織に普及・定着するためには段階を踏む必要があります。そして、上達の早い組織もあれば稚拙な活動にとどまる組織もあります。そのような組織的な能力水準のことを「成熟度」といいます。たとえば、ソフトウェア開発では米国のカーネギーメロン大学が開発した「CMM(能力成熟度モデル)」が事実上の標準になっています。
 
UX/ユーザビリティ活動に関して標準といえる成熟度モデルは確立されていませんが、私は 6段階のレベルに分かれると考えています。
 
20161221_001
 
マイクロソフトや IBM、SAP といった世界トップクラスのIT企業は完熟期に達しているといえるでしょう。昨今は、日本でも、多くの企業がユーザーエクスペリエンスを経営課題に掲げているので、一見すると完熟期に達しているように見えるかもしれません。しかし、現実にはその多くはユーザーテストさえ定着しておらず、実力は原始期または黎明期レベルだと言わざるを得ません。
 

テスト・ファースト

 
成熟度モデルに“飛び級”はありません。原始期からいきなり揺籃期や完熟期を実現することはできません。今のレベルが原始期ならば、まずは黎明期を目指すことになります。つまり「UX/ユーザビリティ活動の第一歩はユーザーテストから」ということになります。
 
ただし、黎明期では、ユーザーテストの価値は認められるものの、製品の利用品質向上にはつながりません。製品がほとんど完成してからテストしても「もはや手遅れ」だからです。テスト結果を反映させて製品を修正しようとすると、納期とコストがオーバーしてプロジェクトは失敗に終わります。
 
それを避けるためには「作る前にテストする」ことです。揺籃期に達して、ユーザーテストとプロトタイプの技術を組み合わせて利用するようになれば、事前に問題点を発見して修正できるようになります。さらにプロトタイプとユーザーテストを繰り返す(反復設計)ようになれば、ほとんどの問題点は設計・開発段階で発見・修正されるので、製品の利用品質は飛躍的に向上します。
 
「ダイヤモンドの原石は単なるガラス片のようにしか見えない」と言います。研磨されて初めて魅惑的な輝きを放つのです。同じように、どんなに革新的なアイデアに基づいた製品であっても“研磨”しなけばその価値をユーザーに届けることはできません。製品開発においてその役割を果たすのは試作とテストを繰り返す「反復設計」です。
 
ユーザーインタビュー、ペルソナ、ジャーニーマップ、 etc…。確かに、UX/ユーザビリティ活動で用いるべき手法は多々ありますが、その中でもユーザーテストは、まず最初に取り組むべき手法であり、かつ最も重要な手法あると言えます。
 

ユーザーテストが学べる3冊

 
本連載では、半年間にわたって高速スタイルのユーザーテストについて主なポイントを解説してきましたが、「さらに学びたい」という人のために、比較的手軽に読める関連書籍を3冊ご紹介しておきます。
 
20161221_002
 
◎『ユーザビリティエンジニアリング(第2版)』 オーム社, 2014年
https://www.amazon.co.jp/dp/4274214834/
私(樽本)の著書です。2005年刊行の初版から数えると計13刷、累計1万部を超える、日本におけるUX/ユーザビリティ分野のロングセラーです。ページ数の約半分はユーザビリティ評価法の解説にあてています。実務レベルの知識が得られる内容です。
 
◎『超明快 Webユーザビリティ』 ビー・エヌ・エヌ新社, 2016年
https://www.amazon.co.jp/dp/4802510314/
激安ユーザーテストの伝道師スティーブ・クルーグが書いた世界的ベストセラーです。第9章「1日10円できるユーザビリティテスト」にその「激安」ぶりが、余すところなく描かれています。現在主流になっている様々な軽量テスト手法のルーツと言える内容です。
 
◎『Web制作者のためのUXデザインをはじめる本』 翔泳社, 2016年
ttps://www.amazon.co.jp/dp/4798143332/
デジタルマーケティング会社IMJのスタッフが共同で書いた入門書です。偶然にも、この本でもUXデザインを第2章「ユーザビリティ評価からはじめる」ことを推奨しています。第3章「プロトタイピングで設計を練りあげる」も必読。どの章も実例やイラストが豊富で、見ていて楽しい内容です。
 

81vCozoDHzL._UX250_
【著者紹介】
樽本 徹也(たるもと てつや)
利用品質ラボ代表。ユーザビリティ工学が専門で特にユーザ調査とユーザビリティ評価の実務経験が豊富。著書は『アジャイル・ユーザビリティ 』 『ユーザビリティエンジニアリング(第2版)』(いずれもオーム社)など。
認定人間中心設計専門家、認定スクラムプロダクトオーナー。産業技術大学院大学「人間中心デザイン」講師。
>>第1回「ユーザーテストとは」
>>第2回「ユーザーテストの大原則」 
>>第3回「ユーザーテストの基本理論」 
>>第4回「ユーザーテストの実施手順」 
>>第5回「リクルートのコツ」 
>>第6回「タスク設計法」 
>>第7回「観察テクニック」 
>>第8回「データ分析法(その1)」 
>>第9回「データ分析法(その2)」 
>>第10回「再設計」 
>>第11回「反復設計」 

 

************大好評!ダウンロード資料公開中************

▼「高速ユーザーテスト実践ワークショップ」レポート▼

pic_download02

お問い合わせ

ユーザーテストのお問合せは下記からお願いします

電話でのお問い合わせ/053-545-5105(月〜金/9:00〜18:00)