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2016/11/25

【連載】高速ユーザーテスト実践講座 第10回「再設計」

第10回「再設計」

 
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分析が完了してもユーザーテストは終わりではありません。ユーザーテストの目的は利用品質の改善です。見つかった問題点に対して妥当な解決案を提示しなければ、テストを行った価値はありません。
 

問題解決の基本

 
問題が10個あれば、その解決案も10個──。
そういった1対1の対応は逆に事態を悪化させるかもしれません。個々の問題に1つずつ対症療法を施していくと、そのユーザーインタフェースは“絆創膏”だらけになってしまいます。それは製品の複雑さを増して、結局、さらにユーザーを混乱させてしまうかもしれません。
 
問題が10個あっても原因は10個とは限りません。問題点を構造化して“根本原因”を突き止めれば、1つの解決策で複数の問題が解決できます。そして最も深刻な根本原因を解決できれば、製品の品質は飛躍的に向上します。
 
また、優れたアイデアは意外と単純なものです。多くの場合、新しく何かを作って加えることは根本的な解決にはつながりません。それよりも何かを取り去ったり、位置や順番を少し変えたり、向きを調整したりといった小さな変更が大きな成果を生みます。
 
さらに大切なのは“最善を尽くさない”ことです。新たな技術開発を伴うような画期的な解決案を考えたとしても、いつになったら実現できるかわかりません。また「他に、もっと良いアイデアがあるのでは?」と思うと、意思決定を先延ばしにしがちです。ユーザーテストにおける解決案とは、今晩もしくは明日、遅くとも来週中には実装が完了できるような内容であるべきです。
 
なお、アイデアが単純だからといって必ずしも実装が簡単であるとは限りません。解決案を検討する際には、必ず実際の作業に携わる開発者やデザイナを交えて議論しましょう。
 
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デザインスタジオ

 
「誰か、良いアイデアはないのか!?」──ひと昔前、会議の席上で、しびれを切らした上司がよく叫んでいたものです。
 
でも、いきなり「良いアイデア」を出そうとしても無駄です。良いアイデアを出すには、まずは「良いか悪いかわからないアイデア」をたくさん出して、それから徐々に良さそうなアイデアに「絞り込む」ことです。これが、デザイン思考の原則である「発散と収束」です。革新的なアイデアは「発散と収束」を繰り返すことで生まれるのです。
 

これをシステマチックにしたのが「デザインスタジオ」という発想法です。デザインスタジオの手順に従えば、誰でも「発散と収束」が自然と行えます。特にチームで課題解決に取り組むのに最適な手法です。例えば、6人で発想すると以下のような手順になります。
 

1. 課題の定義:発想を始める前に「何を解決するのか」を明らかにします。当たり前のように思うかもしれませんが、実は問題点の共有ができていないチームは意外と多いのです。デザインスタジオでは1ラウンドで1課題しか取り組めません。テストで発見された問題の中から「重要」かつ「難問」に絞り込みましょう。
2. 個別に発想(3分):まず最初は全員が個別に発想します。この段階では「質より量」を追求します。A4用紙を六等分した「6-up」を用いて、なるべく多くのアイデアを出すようにします。実際にやってみると分かりますが、3個まではアイデアのバリエーションで済みますが、4個以上出そうとすると発想の転換を必要とします。
3. 発表(90秒×6人=9分):順番に6-upの内容を他のメンバーにプレゼンテーションします。この時の原則は「批判厳禁」です。今は多様なアイデアを出す段階です。どのアイデアが優れているかを判断するときではありません。
4. 二人一組で発想(5分):全員のアイデアが出揃ったら、次は、二人一組になって改めて発想します。今度は二人で1つのアイデアを出します。この時、6-upで出た他の人のアイデアも自由に参照・改変して使用して構いません。デザインスタジオではアイデアは誰のものでもありません、チーム全員のものなのです。
5. 発表(3分×3組=9分):二人で考えた1つのアイデアを他のメンバーにプレゼンテーションします。アイデアを売り込むのではなく、なぜそのようなデザインに達したのか、その背景や意図について説明するようにします。
6. 全員でアイデア取りまとめ(10分):提示された3つのアイデアを1つの最終案に取りまとめます。頭を「批判的思考」に切り替えて、それぞれのデザインの良い点・悪い点を議論します。投票で1つに絞るという方法もありますが、それよりも、それぞれのアイデアの良いところを組み合わせて新たなデザインに統合する方が良い結果につながります。

 
デザインスタジオでは、このように最初に30個以上の多様なアイデアが出て、その後、徐々に絞り込まれて、最終的にチームとしての意思決定に至ります。その間、わずか40分。つまり、約2時間あれば「ワースト3」の難問を全て解決できてしまいます。
 

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【著者紹介】
樽本 徹也(たるもと てつや)
利用品質ラボ代表。ユーザビリティ工学が専門で特にユーザ調査とユーザビリティ評価の実務経験が豊富。著書は『アジャイル・ユーザビリティ 』 『ユーザビリティエンジニアリング(第2版)』(いずれもオーム社)など。
認定人間中心設計専門家、認定スクラムプロダクトオーナー。産業技術大学院大学「人間中心デザイン」講師。
>>第1回「ユーザーテストとは」
>>第2回「ユーザーテストの大原則」 
>>第3回「ユーザーテストの基本理論」 
>>第4回「ユーザーテストの実施手順」 
>>第5回「リクルートのコツ」 
>>第6回「タスク設計法」 
>>第7回「観察テクニック」 
>>第8回「データ分析法(その1)」 
>>第9回「データ分析法(その2)」 

 

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▼「高速ユーザーテスト実践ワークショップ」レポート▼

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