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2016/11/9

【連載】高速ユーザーテスト実践講座 第9回「データ分析法(その2)」

第9回「データ分析法(その2)」

今、仮に5人のユーザーをテストして40個の問題点が観察されたとします。しかし、それらの問題点をリストアップしただけでは、どこから手をつけていいのか判断できず、開発チームは混乱してしまいます。ユーザーテストでは問題点を明らかにするだけでなく、問題の重大さ(インパクト)も明らかにしないと結果を活用できません。
そこで、「問題の発生頻度」と「問題の質」の2軸を使ってインパクトを評価します。
 

プロブレム・マトリクス

 
「問題の発生頻度」とは、問題点が観察されたユーザーの人数のことです。テストでは被検者全員で観察された問題点もあれば、ひとりだけで観察された問題点もあります。当然ながら、多くのユーザーで観察された問題点の方が発生頻度は高いと判定できます。

 
発生頻度をカウントするために、問題点と被検者を掛け合せた表=「プロブレム・マトリクス」を作成します。つまり、どの問題点がどの被検者で観察されたのかを一覧表示するのです。
 



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プロブレム・マトリクスの合計欄の数値を使えば問題点を発生頻度順に並べ替えできます。ただ、発生頻度の数値自体にはそれほど意味はありません。ユーザーテストでは「5人中4人=80%」「5人中1人=20%」という意味ではありません。「5人中4人=多くのユーザーで観察された」「5人中1人=1人のユーザーだけで観察された」という意味です。小サンプルのユーザーテストでは統計的分析に依存すべきではありません。

 
そこで、通常は「1人、複数、全員(ほぼ全員)」という3段階で評価します。例えば、被験者数が5人ならば「1人、2~4人、5人」と分類して、10人ならば「1人、2~8人、9~10人」と分類します。この境界値は厳密なものではなく、問題点の発生頻度を見た上で「1人、2~3人、4~5人」などと変更する場合も少なくありません。
 

インパクト分析

 
「問題の質」とは「効果・効率・満足度」のことです。効果問題とはユーザーのタスク達成を困難にするような問題です。効率問題とはユーザーを戸惑わせたり、無駄な操作を行わせるような問題です。満足度問題とはユーザーが不満や不安を口にするような問題です。「効果問題 > 効率問題 > 満足度問題」の順番で評価します。
※「効果・効率・満足度」については第2回を参照のこと。
 



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※セル内の数値は優先順位(問題の重大さ)
 
例えば、「優先順位1」と「優先順位2」は必ず解決すべき課題、「優先順位3」も出来る限り解決に取り組む課題と定義して、それらの解決の目処がついてから「優先順位4」や「優先順位5」の課題に取り組むようにすれば、効率よく問題点を処理できます。
 
なお、高速ユーザーテストでは解決する問題の数を絞り込むのがコツです。テストで見つかったすべての問題を解決しようとしても、現実には手が回りません。そこで、米国の有名なユーザビリティコンサルタントのスティーブ・クルーグが提唱するように、「1回のテストで解決する問題点はワースト10まで」といったような割切りが必要になります。そのためにも、観察された問題点の重大さを評価して優先順位付けすることは重要です。
 
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インパクト分析表の例(被験者数3名)
 

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【著者紹介】
樽本 徹也(たるもと てつや)
利用品質ラボ代表。ユーザビリティ工学が専門で特にユーザ調査とユーザビリティ評価の実務経験が豊富。著書は『アジャイル・ユーザビリティ 』 『ユーザビリティエンジニアリング(第2版)』(いずれもオーム社)など。
認定人間中心設計専門家、認定スクラムプロダクトオーナー。産業技術大学院大学「人間中心デザイン」講師。
>>第1回「ユーザーテストとは」
>>第2回「ユーザーテストの大原則」 
>>第3回「ユーザーテストの基本理論」 
>>第4回「ユーザーテストの実施手順」 
>>第5回「リクルートのコツ」 
>>第6回「タスク設計法」 
>>第7回「観察テクニック」 
>>第8回「データ分析法(その1)」 

 

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