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2016/10/5

【連載】高速ユーザーテスト実践講座 第7回「観察テクニック」

・第7回「観察テクニック」

「百聞は一見にしかず」──。
ユーザーテストの効能をひと言で表すとすれば最も適した表現だと思います。
「作り手にとって当たり前のことが、ユーザーにとっては全く当たり前でない」ということを身にしみて理解するには、生のユーザーの言動を間近に自分の目で見る以上に効果的な方法はありません。
 

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“目撃者”を増やす

関係者の見学の有無はユーザーテストの成否を左右します。
ユーザーテストの見学とは“目撃”と同義語です。実際に自分の目で見てしまうと、どんなに衝撃的な結果であっても受け入れざるを得なくなるのです。
そのため目撃者の数が多ければ多いほど、重大な意思決定が迅速に可能になります。
 
逆に誰も見学に来てくれなければ目撃者はあなただけということになります。往々にしてテスト結果は意思決定者や開発者にとって都合の悪い──例えば「ゼロから作り直さざるを得ない」というような──内容です。
よほど上手く説明しない限り、あなたの目撃証言を彼らは真に受けないでしょう。
 
ただ、すべての関係者にすべてのセッションを見学してもらうのは現実には困難です。そこで、なるべく“偉い人”を優先して見学を依頼します。
いったん目撃者として巻き込んでしまえば、彼/彼女はその後、あなたの強力な擁護者になってくれます。
 

そして、なるべく3セッション以上を見学してもらうように時間の都合をつけてもらいましょう。1セッションしか見学しない場合、その特定のユーザーの言動がその後の製品仕様を決定してしまう危険があります。それは場合によっては、全く見学しないよりも悪い結果を招きます。
 

見学席の準備

 
見学者が少人数の場合:2~3人の場合は1つのテーブルを囲んで座ります。パソコンの前にユーザーに座ってもらって、その横にインタビューアが座り、その対面に見学者が座ります(部屋が広ければ、見学者はユーザーの後ろに座っても構いません)。
なお、見学者の前にはモニター用ディスプレイが設置されています
 
見学者が中人数の場合:見学者の人数が少し増えた場合(たとえば5~6人)は、部屋をパーテーションやカーテンなどで仕切ります。天井まで完全に仕切る必要はないので、移動式のローパーテーションやホワイトボードでも構いません。
要は被験者と見学者がお互い“気にならない”程度の仕切りがあればいいのです。

 
見学者が大人数の場合:見学者が10人以上になったり、テストの途中に見学者が出入りしたりする場合は部屋を分けます。隣や向かいの会議室をもう1部屋借りて、そちらを見学ルームにします。2つの部屋の間はケーブル等で結んでテストルームの音声や映像を視聴できるようにします。
なお、音質や画質は多少落ちますが、SkypeやGoogle hangout等のテレビ電話サービスを利用すればケーブルは不要になります。
 

大人数の見学会場の例

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観察の基本

 
「観察」といわれても「いったい何をどのように“観察”すればよいのか?」と戸惑うかもしれません。観察項目の詳細なリストを作って、読心術でユーザーの心の中を観察して、ユーザーのすべての行動を目にもとまらぬ早さで速記(またはタイプ)する?──いずれも必要ありません。
 

ユーザーテストでは「どの画面」で「何が起きた」のか、その時ユーザーが「何と言った」のかを観察すれば十分です。
そして、その事実をありのままに目と耳に焼き付けます(なお、ユーザーの行動を手動ですべて記録するのは不可能です)。
 

ただ、“色眼鏡”を掛けて観察してしまうと事実が歪んで見えます。
例えば、あるデザイナが自分のデザインの正しさを証明したいと考えて観察するとします。そうすると、彼には自分のデザインが上手く機能している場面が強く記憶に残るでしょう。逆に、他人のデザインが間違っている証拠をつかもうと考えて観察すると、その特定の画面で何人かのユーザーが誤操作する場面だけが記憶に残ります。
 

また、観察は分析ではありません。「タブの色をもっと明るくすべきだ」というのは分析結果であって観察結果ではありません。
今は観察する時です。分析するのはすべての観察データが集まってからです。

 
さらに、「ユーザーの声」に惑わされてはいけません。ユーザーの行動を裏付ける「発話」は重要な情報ですが、「好き/嫌い」や「○○と思う」といった感想や意見は当てになりません。わずか数人のユーザーの主観的評価に基づいて重大な意志決定をすべきではありません。

 
なお、ユーザーテストで観察する事実には“良い事実”も含まれます。ユーザーがスムースに操作を進める場面もしっかり目に焼き付けます。上手く機能している箇所を不用意に改悪しないためです。ユーザーテストとは決して“あら探し”ではありません。
 

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【著者紹介】
樽本 徹也(たるもと てつや)
利用品質ラボ代表。ユーザビリティ工学が専門で特にユーザ調査とユーザビリティ評価の実務経験が豊富。著書は『アジャイル・ユーザビリティ 』 『ユーザビリティエンジニアリング(第2版)』(いずれもオーム社)など。
認定人間中心設計専門家、認定スクラムプロダクトオーナー。産業技術大学院大学「人間中心デザイン」講師。

>>第1回「ユーザーテストとは」
>>第2回「ユーザーテストの大原則」 
>>第3回「ユーザーテストの基本理論」 
>>第4回「ユーザーテストの実施手順」 
>>第5回「リクルートのコツ」 
>>第6回「タスク設計法」 
 

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