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2016/8/24

【連載】高速ユーザーテスト実践講座 第4回「ユーザーテストの実施手順」

・第4回「ユーザーテストの実施手順」

ユーザーテストは①リクルート、②テスト設計、③実査、④分析、⑤再設計という手順で実施されます。

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ユーザーテストは協力してくれるユーザー(「被検者」)を探すことから始まります。これを「リクルート」といいます。
当然ながら、テストの被験者は誰でも構わないというわけではありません。ターゲットユーザーで、かつ、今回のテスト目的に応じた条件を満たした人でなければなりません。そのうえ、テストはある特定の日時に行いますので、その日時にテスト実施会場まで足を運んでくれる人という条件も加わります。
 
そういった条件を満たした人を探すために、通常、調査会社に依頼してパネル(登録モニター会員)を対象に小規模なインターネット・アンケート調査を行います。複数項目のアンケートに回答してもらって、その中からなるべく条件を満たした人を抽出してアポイントを取ります。最終的には「被験者リスト」が調査会社から送られてきます。
 
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ユーザーテストでは被験者に何らかの作業をしてもらいます。例えば、オンラインショップで商品を購入してもらったり、会計ソフトを使って確定申告を行ってもらったり、スマホで撮った写真を加工してもらったりします。これを「タスク」といいます。タスク設計はユーザーテストの成否を左右す
る重要な要素です。
 

タスク設計を終えたら「インタビューガイド」を作成します。インタビューガイドには、被験者の入室から退室までの流れ、質問やタスクの提示順序、時間配分、そしてインタビューアが話す内容がすべて記載されています。また、被験者がタスクを実行する上で必要な情報は、口頭で伝えるよりも、紙に書いて渡した方が確実に伝わるので「情報提示カード」も作成します。
 
なお、どんなに綿密にテスト設計を行っても、実際にテストを行うと予想外の事態が発生します。もちろん、被験者の行動が予想外なのは織り込み済みですが、インタビューガイドや情報提示カードの内容に問題が見つかることも少なくありません。そこで、事前に「パイロットテスト」を行います。
 
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本番のテストは「ユーザビリティラボ」を使って行います。ユーザビリティラボはテスト専用の施設で、インタビュールームにはパソコン、カメラ、マイクなどが設置されており、被験者がタスクを実行する様子をマジックミラーで仕切られたモニタルームから観察・記録できるようになっています。
 
ユーザビリティラボでは、おおよそ以下のような手順でテストを進行します。

1.予定の時刻になると、被験者をインタビュールームに案内して、所定の席に座ってもらいます。インタビューの目的を簡略に伝えた後、撮影許可と情報開示禁止同意という2種類の契約を交わします。
2.テストでは、まず事前インタビューを行います。事前インタビューの目的の半分は、被験者との信頼関係構築(これを「ラポール」と言う)です。会話することで緊張をほぐし、なるべく平常心でタスクに取り組んでもらえるようにするのです。
3.そしてタスク実行観察に移行します。被験者がタスクを実行している間、インタビューアは横で観察を続けます。被験者の発話が止まったら、「今、何を考えているのですか?」「どうなると思っていたのですか?」といった質問を被験者に投げかけて、発話を始めるきっかけを与えます。
4.一通りタスクが終了したら簡単に事後インタビューを行います。所定の時刻がきたらインタビューを切り上げて、被験者に謝礼を渡して、お見送りします。
 
なお、専用のラボを使わなくても、社内の会議室などでもテストは行えます。また、インターネット経由でテストを実施・観察できる「リモート・ユーザーテスト」のサービスを提供している会社もあります。
 
http://www.usertest-onsearch.com/
 
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実査が終わると、テストのビデオ映像を見直して記録を作成します。このようなユーザーの行動と発話を記録したものを「プロトコル」といいます。そして、このプロトコルを丹念に読み直して、ユーザビリティ問題を発見していきます。最後に、これまでのすべての情報をまとめ上げて「レポート」を作成します。
 
従来、上記のような分析作業には1~2週間を要していました。ひと昔前ならば、それは大きな問題ではありませんでした。しかし、近年の製品開発の現場には「アジャイル」の波が押し寄せています。
アジャイル開発では製品を小さな単位に分割しながら、1~4週間という短期の開発を反復的に行います。「2週間後に分厚いレポートを届ける」ようなテストではこのスピードについて行けません。今、求められているのは「何が問題で、どうすればよいのか」を「その場」で明らかにできるようなテストです。
 
高速ユーザーテストではプロトコルやレポートは作成しません。関係者全員で実査を見学して、問題点をリストアップして、重要度を判定して、どの問題を解決すべきか意思決定します。その所要時間は1~2時間──。この分析作業の大幅な効率化が高速ユーザーテストの最大の特徴です。
 
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ユーザーテストのレポートには「リコメンデーション」という形で、テストで発見された問題点に対する改善案が示されています。ただ、それらのリコメンデーションの内容は開発チームの自由度を損なわない程度にとどめられています。テストが終われば自動的に製品の改善案が得られるという訳ではありません。
 
レポートを受け取った開発チームは、じっくりと内容を読み込み、リコメンデーションを参考にしながら具体的な改善案を作り、それらを関係者に回覧して合意を形成します。従来、このような再設計活動には1ヶ月以上を要することも珍しくありませんでした。
 
高速ユーザーテストでは、主要な関係者が一堂に会している実査の機会を活用して、その場で改善案を作成して合意も形成してしまいます。その際に用いる手法が「デザインスタジオ」です。
 
デザインスタジオとは発散(デザイン思考)と収束(クリティカル思考)を交互に繰り返して優れたアイデアを生み出すワークショップです。デザインスタジオを使えば、短い時間の中で、参加者の多様なアイデアを引き出し、それらを統合して、最終的に一つの解決案にまとめることが出来ます。
 
通常、テスト終了後、1~2時間で分析を終え、その後、約1時間のデザインスタジオ・セッションを設けます。
 

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【著者紹介】
樽本 徹也(たるもと てつや)
利用品質ラボ代表。ユーザビリティ工学が専門で特にユーザ調査とユーザビリティ評価の実務経験が豊富。著書は『アジャイル・ユーザビリティ 』 『ユーザビリティエンジニアリング(第2版)』(いずれもオーム社)など。
認定人間中心設計専門家、認定スクラムプロダクトオーナー。産業技術大学院大学「人間中心デザイン」講師。

>>第1回「ユーザーテストとは」
>>第2回「ユーザーテストの大原則」 
>>第3回「ユーザーテストの基本理論」 

 

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▼「高速ユーザーテスト実践ワークショップ」レポート▼

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