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2016/8/10

【連載】高速ユーザーテスト実践講座 第2回「ユーザーテストの大原則」

・第2回「ユーザーテストの大原則」

 
ユーザーテストはグループインタビューや対面式のアンケート調査などとは全く異なる手法です。今回は、非常にユニークなユーザーテストの原則をご紹介しましょう。
 

・思考発話

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タスクを提示して、その実行過程を横で観察する──。ユーザーテストの基本はいたってシンプルですが、一つだけ“秘訣”があります。それはユーザーに「思ったことを口に出しながらタスクを実行」してもらうことです。こうすることでユーザーの認知プロセスが明らかになり、操作の失敗や不満の原因を論理的に分析できるようになります。これを「思考発話法」と言います。
 
参考までに、第1回でご紹介した実際のユーザーテストの映像における思考発話の例を挙げておきます。ここでは、パソコンの標準モデルを選択した直後に、再度モデル選択の画面が提示されて混乱する様子が、ユーザーの発話内容によく表れています。
 

 
PC直販サイトにおけるユーザーの発話の例:
 
1.製品を比較検討する。
「えーと、(標準モデルは)129,800円。こっち(タッチパネル付きモデル)は・・・タッチパネルが付くと3万ちょっとくらい(価格が)上がるのか。」「(タッチパネルを)使うかな?うーん・・・安い方でいいや。」
 
2.標準モデルの購入ボタンを押すと、カスタマイズ画面に遷移する。
 
3.最上部のモデル選択で戸惑う。
「(訳が分からず、3つのモデルを見比べながら)これで・・・?これで・・・?」
 
4.試しに真ん中のモデルを選択してみると、確認ダイアログが表示される。
「『モデルを変更します。』・・・???(『これまで選択したスペックはリセットされます。』)」
 
5.確認ダイアログのOKボタンを押すが、すぐに気付いて標準モデルを選択し直す。
「あー、(ここで変更すると、スペックの指定が全部やり直しになって)タッチパネル付きになっちゃうのか。」
 

・効果・効率・満足度

 
ユーザーテストでは“生”のユーザの言動を目の当たりにするので、テストを観察している開発者やデザイナはその情報量の多さに圧倒されてしまうかもしれません。ユーザーの行動を漫然と観察するよりも、ポイントを絞って観察した方が効果的です。ユーザーテストの観察ポイントは3つあります。
 
1.まず、ユーザーは独力でタスクを完了できただろうか。もし完了できなかったとすれば、その製品は「効果」に問題があると言えます。これは端的に言えば、その製品は「使いモノにならない」ということであり、もっとも深刻な問題です。
 
2.次に、ユーザーは無駄な操作を行ったり、戸惑ったりしなかっただろうか。独力でタスクを完了できたとしても、その間に、ユーザーを考え込ませたり、遠回りさせたりするような製品は「効率」に問題があると言えます。
 
3.さらに、ユーザーは不安や不満を感じていなかっただろうか。たとえ、ユーザーがほぼ想定ルートを通って独力でタスクを完了できたとしても、途中で不愉快な思いをさせるような製品は「満足度」に問題があると言えます。ユーザーは明示的に不満を表明する場合もありますが、表情や態度で暗示的に不満を表明している場合もあります。
 
一般に、ユーザーテストとは「効率問題(=ユーザの無駄な操作や戸惑い)」を発見することが目的だと考えている人が多いと思います。確かに、テストで発見される問題点の多くは効率問題です。
 
しかし、より深刻な「効果問題(=ユーザーがタスクを完了できない)」が潜んでいる可能性を意識してテストを実施しないと、せっかく開発の初期段階からテストを行ったのに、結局は使いモノにならない製品をリリースしてしまうという結果になりかねません。
 
さらに「満足度問題(=ユーザーの不安や不満)」を軽視してはいけません。満足度問題も程度によっては、ユーザーがその製品を二度と使ってくれなくなる(つまり、事実上の効果問題)からです。
 
高速ユーザーテスト図表原稿
ユーザーテストでは効果問題・効率問題・満足度問題の有無を観察する。
 

・ユーザーの声、聞くべからず

 
残念なことに「ユーザーテストとはユーザーにタスクを実行してもらって、その途中でいろいろ意見を聞くことだ」という”誤解”をしている人が少なくありません。これは完全な間違いです。ユーザーテストの大原則とは「ユーザーの声、聞くべからず」なのです。
 
ユーザーテストとは、ユーザーに”製品レビュー”をしてもらことではありません。テストにおいてユーザーに要求すべきことは「(思考発話しながら)真剣にタスクに取り組む」ことだけです。その製品の利用品質は、ユーザーがタスクを完了するまでの間に発する行動と発話によって表されます。それらの行動と発話を分析して、何が問題で、それをどう改善すべきかを考えるのは、製品の作り手である我々の仕事です。
 
ユーザーはアナリストでもなければ、デザイナでもありません。「どこが悪いと思いますか?」「どう改善すればよいと思いますか?」──テストの途中に、こんな質問をユーザーに投げかけてはいけません。タスクを提示したら、後は、その実行過程を”黙って”横で観察するだけでよいのです。
 

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【著者紹介】
樽本 徹也(たるもと てつや)
利用品質ラボ代表。ユーザビリティ工学が専門で特にユーザ調査とユーザビリティ評価の実務経験が豊富。著書は『アジャイル・ユーザビリティ 』 『ユーザビリティエンジニアリング(第2版)』(いずれもオーム社)など。
認定人間中心設計専門家、認定スクラムプロダクトオーナー。産業技術大学院大学「人間中心デザイン」講師。

>>第1回「ユーザーテストとは」
 

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