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2016/8/3

【連載】高速ユーザーテスト実践講座 第1回「ユーザーテストとは」

ユーザーテストが製品の利用品質向上に役立つことはよく知られています。ただ、従来のやり方は「費用が高くて、結果は遅い」ので、現代のスピード感のある製品開発には適さないとも言われています。「高速ユーザーテスト」ならば、手軽にテストして、あっという間に分析して、迅速に改善案をフィードバックできます。この連載では、ユーザビリティ工学の第一人者である樽本徹也さんに、その基本知識から実践テクニックまでを解説していただきます。
 
 

・第1回「ユーザーテストとは」

 
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「ユーザーテスト」という言葉は聞いたことがあっても、見たことはないという人が多いかもしれません。そこで、第1回は実際にユーザーテストをご覧いただきましょう。
 

・見込み客を招いて

世界中に「リンスタ」ブームを巻き起こしたエリック・リースのベストセラー『リーン・スタートアップ』の中に、こんなシーンが出てきます。
 

我々は見込み客から話を聞くことにした。将来的に製品を買ってくれるのではないかと思う人々を事務所に招き「この新製品を使ってみてください」と頼んだのだ。例えば17歳の女の子が来てくれた場合、こんな感じになる。
 
「あら、これはおもしろそうね」と言いながら女の子がアバターを選ぶ。アバターをカスタマイズして、見た目を好みにする。そこで、「じゃあ、インスタントメッセージのアドオンをダウンロードしてください」と言うと「それって何なの?」と聞き返されてしまう。そこで、いろいろ説明してダウンドーロしてもらう。次に、「ダウンロードが終わったら友達をチャットに招待してみてください」と言うと「絶対にイヤ!」「え・・・なぜですか?」「これがクールかどうか、まだ分かってないから。それなのに友達を招待しなさいって?そんな危ないこと、できるわけがないじゃない」──。
 
最初は「この娘は例外で、次の人は大丈夫」と思ったのだが、次の人も同じことを言うのだ。その次もまた同じ。こうなれば、いくら頑固な人間でも何かがおかしいと思わざるを得ない。
※引用元:エリック・リース(著)『リーン・スタートアップ』、日経BP社、2012年(p62-63)

 
上記のシーンでエリック・リースが使った手法──見込み客を事務所に招いて、その場で製品を使ってもらう──それが『ユーザーテスト』(ユーザビリティテストとも言う)です。
 
このようなテスト手法は、米シリコンバレーのスタートアップの”専売特許”という訳ではありません。以前から、IBM、マイクロソフト、グーグル等の世界的IT企業は社内に専用の施設を設けて恒常的にテストを行っていますし、近年、日本の企業(特にIT企業)もこういった活動に注力するようになっています。
 
テストの対象はウェブサイトやスマホアプリのほか、パソコン用ソフトウェア、ゲーム、家電、IoTなど多岐にわたり、テスト手法も様々なものがありますが、その基本はとても単純なものです。
 
1.ユーザーにタスク(作業課題)を実行するように依頼する。
2.ユーザーがタスクを実行する過程を観察、記録する。

 
たったこれだけのことなのですが、ユーザーテストはまさしく「百聞は一見にしかず」という体験を製品/サービスの開発チームに与えてくれます。エリック・リースの場合も、テストによって自分たちの仮説が根本的に間違っていることを悟り、そして、この手痛い失敗体験を元に、後に「リーン・スタートアップ」と名付けられる革新的な方法論を生み出したのです。
 

・ユーザーテストの実例

それでは、実際のユーザーテスト(ユーザーテスト「ON Search」で実施)の映像をご覧いただきましょう。
 
これは、PC直販サイトのユーザーテストの映像の一部です。テスト本番では機種の選定から支払いまでの購買行動全体をテストしましたが、この映像はそこから中盤部分(主にスペック指定の段階)だけを切り出しています。

なお、画面上の赤い点と軌跡は、「アイトラッキング装置」で計測されたユーザーの視線の動きを表しています。また、画面右下にはユーザーの正面映像が映っていますが、個人情報保護のために”ぼかし”を入れています。
 

 
の短い映像の中だけでも、ユーザーがモデル選択で混乱したり、押せないボタンを押そうとしたり、不要な選択項目が多いと不満を述べたりするといった問題点がいくつも観察できます。テスト全体ではもっと多くの問題点が観察され、その中には、ビジネスの成果に直結するような深刻な問題も含まれていました。
 
なお、ユーザーテストで観察される問題点の多くは、アンケート調査やグループインタビューでは明らかにできません。ユーザーは「何となく使いづらかった」という印象は持っていても、具体的な問題点を全て記憶することは不可能だからです。そもそも、意味を誤解したり操作に失敗したりしたことに、本人は気付いていない場合も少なくありません。
 
本当にユーザーから愛される製品/サービスを作ろうと思ったら、ユーザーを「事務所に招いて、その場で製品を使ってもらう」以外に良い方法はありません。
 

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【著者紹介】
樽本 徹也(たるもと てつや)
利用品質ラボ代表。ユーザビリティ工学が専門で特にユーザ調査とユーザビリティ評価の実務経験が豊富。著書は『アジャイル・ユーザビリティ 』 『ユーザビリティエンジニアリング(第2版)』(いずれもオーム社)など。
認定人間中心設計専門家、認定スクラムプロダクトオーナー。産業技術大学院大学「人間中心デザイン」講師。

 

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